QUADRAL GALAN 9 試聴記 その4
続けてハンス・クナッパーツブッシュの録音。
まあ、小生の聞く音楽の本丸ですのでご容赦を。
今回は、1963年のブルックナー/交響曲第8番です。
ハンス・クナッパーツブッシュには、
1963年12月の非常に近接した時期に、
ライヴ録音で収録されたモノラルのブルックナー/交響曲第8番と、
WESTMINSTERにセッション録音された
ステレオのブルックナー/交響曲第8番があります。
両方とも非常な名演で、
ライヴ録音はセッション録音をさらに凝縮した、
超の付く名演の記録です。
聴衆のいるライヴ録音の方が
クナッパーツブッシュの興が乗っていたのは確かで、
数多あるブルックナー/交響曲第8番の録音の中でも、
決定的録音の一つです。
GALAN 9で二つの録音を聞くと、
モノラルのライヴ録音は、
放送用録音のため、
万全の録音体制ではなかったからか、
名演の記録ながら低域に寸詰まり感があったり、
やはり高域の抜けが悪かったりするのですが、
ステレオのセッション録音はその不満が解消され、
ニアフィールドで聞くと、
見事にオーケストラが眼前に広がって聞こえます。
でも、
ヘッドフォン(小生の場合はSTAX SRM-T1S+SR-404)で聞くと、
セッション録音はマルチモノ的なステレオ感に不自然さがあるのに対し
(それにWESTMINSTER盤はデッドですし)、
モノラルのライヴ録音では左右の広がりでは不利なものの、
楽曲を集中して、
深く沈潜して聞くことができるようなところがありました。
スピーカーとヘッドフォンでの聴感上の違いを、
ある程度、頭に入れておいた方が、
それぞれの特徴がよく分かって楽しめます。
もちろん、
これは聞き比べたからの結果で、
GALAN 9の再現能力は非常に高いため、
ライヴ録音の方でも、
もしセッション録音がなかったとしたら、
おそらく、これはこれで大満足して聞いていたことでしょう。
今は活動を停止したDreamlifeから出たライブ録音は、
優れた放送用音源です。
でも、セッション録音、ライヴ録音とも、
両方ともクナッパーツブッシュのかけがえの記録です。
ステレオのセッション録音の第3楽章、
沈潜とした抒情詩の中で
(本来、第3楽章は宗教的な叙事詩的性格を持っています)、
ハープの出てくるところは、
当時のマルチモノ録音ですが、
その清浄な響きに、
やはり感動してしまうのでした。
さらに第4楽章での、
振幅の大きな音楽では、
単に物理的に楽器の音が大きい、
小さいということではなく、
音を弱くした時と強奏の時の音楽の距離感というか、
なぜ、音量を小さく聞かせなければならないのか、
それがどのように音像感に影響するのかを、
GALAN 9で気づかされた箇所が多々ありました。
これは今まで経験したことがなかったことです。
ブルックナーが意図した
(クナッパーツブッシュが使用したのは改訂初版ですが)、
立体感と奥行きのある、
ピアニシモとフォルテシモの振幅を聞くことができます。
ブルックナーの交響曲では、
遠近感が非常に重要だ、ということでしょうか。
GALAN 9はあいまいさの非常に少ないスピーカーですので、
その辺りの音楽のあり様を、
モニター用スピーカーとはまた別の次元で、
シビアに聴かせてくれます。
【GALAN 9のスペック】
形式:2ウェイ バスレフ
出力:80/140 W
周波数特性:36…65.000 Hz
クロスオーバー周波数:2900 Hz
能率:85 dB
インピーダンス:4Ω
トゥイーター:quadral quSENSE アルミニウム リボン
ウーファー:155mm quadral ALTIMA
寸法(w x h x d):33 x 21 x 29 cm
重量:10 kg/1台
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