QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その14
今回から、
アンプをMUSICA RAICHO 3 intから、
修理から戻ってきたLUXMAN L-540にまたまた変えて、
SEDAN 9の試聴を再開しました。
オーディオにとって、
オルガンの録音は鬼門ともいえます。
録音された場所、その録音の質、
年代によってかなり変わり、
さらに教会やホールに設置されたオルガンそのもの、
奏者によってストップやアーティキュレーション、
装飾音が変わりますので、
一筋縄ではいかないのがオルガン録音です。
今回は地味ですが、
バッハのオルガン小曲集やシューブラー・コラール、
トリオソナタを中心に聞いてみました。
バッハのオルガン曲ではもっとも有名な、
「トッカータとフーガ ニ短調」でももちろんいいのですが、
あまりに凄い音楽なので、
続けて聞くのはかなり辛いという個人的な事情によります(^^;。
後で考えたら、
「トッカータとフーガ ニ短調」で比較試聴した方が楽でした...。
まず、ヘルムート・ヴァルヒャのARCHIVのステレオ録音から。
オルガン小曲集(オルゲルビュヒライン)からいくつか聞いてみました。
最初の「来たれ、異邦人の救い主よ」は、
音量はオフ気味に弾かれた、
少しだんご気味の録音ですが、
これはヴァルヒャのとらえた曲想によるのでしょう。
2曲目からかなり曲想が変化し、
16曲目「古き年は過ぎ去りぬ」では、
かなり広大なFレンジが聞けます。
演奏としては、
スコアに忠実で、
スコアに書かれている以外の装飾音がなく、
オルガン小曲集では、
最も基本的に聞かれなければならない演奏録音ですが、
1969年と少し古めの録音のため、
音的には、ほんの少しですがナローレンジです。
現代のデジタル録音のように、
リミッターをかけた印象のない、
足元がなくなるような凄い低音は大きく感じられません。
でも、聞き進むと録音された音がどうの、
という問題ではなく、ヴァルヒャの真正なバッハのオルガン演奏を、
心ゆくまで聞くことができます。
ステレオ録音で残されたことに感謝です。
次にカール・リヒターのDG盤、
シューブラー・コラールより、
有名な「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」です。
初めてこの演奏録音を聞いた時には、
そのゆったりとしたテンポ、
他の演奏では割と勇ましく演奏されるのに、
リヒター盤では孤独感の強い演奏で、
ショックを受けたことを覚えています。
楽曲の持つ、
意味の深さをとらえた演奏録音といっていいでしょうか。
SEDAN 9で試聴、
この深みのある録音をコラール旋律からペダルに至るまで、
しっかりと聞くことができます。
もう少し低音が出ても良いかなとは思いますが、
個人宅で聞くには十分でしょう。
次にフランスのフィリップ・ルフェーブルが、
パリのノートルダム寺院大聖堂のオルガンを弾いた
同じく「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」です。
フランスはドイツよりもオルガン大国なのではないかと思えるほど、
オルガンも演奏者も多く、録音も数多くあります。
このCDは、確かノートルダム寺院のお土産で売られていたもので、
LP録音からのディストリビュートです。
演奏としては、
リヒターに比べて常識的ともいえる「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」です。
テンポは速めで、
物見の声を聞いて、
イエスの到来を知る悦びがあふれています。
録音はオフ気味で、
「いい音」とは言いにくいのですが、
ボリュームを上げると空気感が豊かで(その分ノイズも多いですが)、
広くて天井の高いノートルダム大聖堂の空間が感じられます。
その広大な空気感は、
「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」の次に収録されている、
「パストラーレ BWV590」で一気に押し広げられます。
SEDAN 9で聞いてもその音はそれなりですが、
この感覚は録音された音の良し悪しよりも、
録音された音に浸るときに生まれるものなのかもしれません。
次はトン・コープマンの「オルガン小曲集」を聞きました。
これは素晴らしい録音です。
最初の「来たれ、異邦人の救い主よ」はかなり速いテンポで、
ヴァルヒャの後に聞くと抵抗感がありますが、
「来たれ、異邦人の救い主よ」から、
その録音された音に飲み込まれそうになります。
スコア以外の装飾音も豊かで、
最初にコープマン盤を聞くと誤解が生まれてしまいそうですが、
録音はさすがに新しいだけに(と言っても1998年ですが)、
演奏の好悪は別にして、
今回聞いた中では、
その録音された音では最も自然で、
広大な周波数とその音色を堪能することができます。
聞き進むと臨場感も豊かで、
オーディオファンがオルガン曲を聞くには、
新しい録音の方がいいのか?
と思ってしまいます。
では最後に、
逆にものすごく古い録音(^^;、
オルガン録音では非常に古い、
アルベルト・シュヴァイツァーのコラール・プレリュード集、
1936年の録音です。
昔は「衆讃前奏曲集」という、
少しいかめしい名前のLPで国内盤が出ていました。
CDは、残念ながらCDマニアには評判の悪い、
東芝EMIのOKAZAKI REMASTER、
いわゆるHS2088リマスターしか棚にはありませんでした。
リマスターされた音には疑問が残りますが、
音楽ファンとして聞くと、
演奏録音としては、
実は、一番心を揺さぶられる演奏録音です。
シュヴァイツァーはアフリカで医療活動に従事、
戦前から日本でも聖人のように扱われてきましたが、
元々聖職者でオルガニストです。
現在、入手できるバッハのオルガン曲のスコアは、
シュヴァイツァー校訂によるものが圧倒的に多いです。
まるで大型の古いラジオで聞いているような音で、
別にSEDAN 9でなくてもよさそうですが、
他のスピーカーでは聞くのが難しい、
演奏の深みと細部に宿る「味」のようなものを、
しっかりと抽出して聞かせてくれます。
SEDAN 9の解像度の優秀さが、
古い録音にも光を当てている印象です。
オルガン曲の再生は、
ブックシェルフでは少し役不足で、
大きなウーファーの付いたフロア型で聞きたいところですが、
SEDAN 9の特徴であるずば抜けた解像度が、
下手なスピーカーで聞くと混濁してしまう録音を、
それこそ、絡んだ糸を解きほぐすように聞かせてくれます。
「こんなもんだ」と聞いてしまっているオルガン曲の細部まで、
新たな発見と驚きをもって聞くことができました。
なお、販売はブラックになります。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)
なお、SEDAN 9(ブラック)は入荷しております。
全国のQUADRALを扱っていただいている、
オーディオ専門店でご注文可能です。
ぜひ専門店でご注文ください。
ただ、近くにオーディオ専門店がない、
あるいはネットショップなどでアカウントがない、
という方は、以下からご注文可能です。
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