*

QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その12

公開日: : 試聴記, CLASSIC, QUADRAL, SEDAN 9

親子二代にわたって指揮者、
兄弟も指揮者という、
珍しい存在がパーヴォ・ヤルヴィです。
父ネーメ・ヤルヴィは全集マニアのように、
色々な作曲家の交響曲全集を作りましたので、
小生などはパパ・ヤルヴィの演奏録音に、
かなりお世話になったというべきでしょうか。

ただ、パパ・ヤルヴィの音楽づくりは、
速めのテンポ、一気呵成の進め方が多かったですので、
もう少し、ゆったりした音楽が聞きたいというときには、
あまりプレーヤーに乗らなかったような...。
パパ・ヤルヴィで初めて聞いた演奏録音は、
BISからリリースされたシベリウスの交響曲でした。
快速演奏に驚いたものです。

息子のパーヴォ・ヤルヴィは、
その昔、録音ではブラームス/交響曲全集(確かVIRGIN?)の頃から、
その録音キャリアが始まったのではなかったでしたっけ?
あれは弟のクリスチャンでしたっけ?
遠い昔のことなので記憶の彼方です。
ヤルヴィ兄弟ではなかったのかもしれません。
廉価盤でしたので小生も持っていました。
処分してしまいましたが...。


そのパーヴォ・ヤルヴィは現在、
世界で最も忙しい指揮者だそうです。
ヤルヴィは日本のNHK交響楽団と、
リヒャルト・シュトラウスを集中的に録音しているそうで、
今回聞いたのは2016年2月の録音の、
「ツァラトゥストラはかく語りき」、
「メタモルフォーゼン」の2曲です。

聞いていてなんだか懐かし味を感じたのは、
NHK交響楽団の音です。
昔、NHK交響楽団はドイツ的な響きで優秀だけど優等生過ぎて、
地味で外れた面白さがないと言われ、
シャルル・デュトワやヴラディーミル・アシュケナージを
首席に据え、
新たな響きを獲得しようとしました。
確かにそういう面はありましたが、
ドイツ的に優等生みたいな音は、
NHK交響楽団の一つの特徴ではなかったかと思います。
小生は昔のNHK交響楽団の音が比較的好きでした。

今度の、ヤルヴィとのリヒャルト・シュトラウスは、
パパ・ヤルヴィとは異なり、
パーヴォ・ヤルヴィのじっくりと腰を割った音楽が功を奏し、
非常に落ち着いた、
それでいてどこか懐かしさを感じる音になっています。

RAICHO 3 intと、SEDAN 9では、
録音された音が優秀なため、
かえってトーンコントロールの位置に迷うほどですが、
最初のオルガンの重低音の響きからしっかりと入っています。
非常に優秀録音です。
演奏は金管楽器の響きも立派で、
破綻なく楽曲が進んでゆきます。
今まで「ツァラトゥストラはかく語りき」は随分と聞いてきましたが、
楽曲に期待する音楽がしっかりと進行してゆきます。
ただ、あまりに破綻がないため、
木箱に収められているような印象があり、
リスナーというのはわがままだなと、
自分自身を苦笑しました。

続く「メタモルフォーゼン」は、
第2次世界大戦で廃墟と化した祖国、
そして犠牲になった人々を追悼した、
いわばリヒャルト・シュトラウスの、
「弦楽のためのレクイエム」のような音楽です。
古くはジョン・バルビローリの、
マーラー/交響曲第6番とセットになっていた録音、
そして、忘れてはならないカラヤンの2種類の録音が愛聴盤です。
さらに古くはフルトヴェングラーの録音や、
オットー・クレンペラーの録音もありますので、
最近の室内オーケストラの演奏を含めて、
いったい、幾つの「メタモルフォーゼン」を聞いてきたのだろう?という、
地味な割にはよく聞く音楽になっています。

パーヴォ・ヤルヴィ盤は、
録音が美しく、
NHK交響楽団の弦楽器の優秀さが手に取るように分かります。
左右の弦楽器群の位置が目に見えるようで、
眼前いっぱいに音場が拡がります。
23弦楽器のために書かれた楽曲ですが、
大ホールでの演奏のためか、
情報によると46名で演奏、
フレーズによっては一つのパートを2名で演奏しているようです。
そのため、かなり厚みのある音になっています。

これだけゆったりと、
豊穣で優れた演奏録音を聞かされると、
何も言えませんね。
後半は実に素晴らしいです。
リヒャルト・シュトラウスと、
共通した経験を持つ古い指揮者の「痛み」とは少し異なりますが、
音楽本来の持つ、
「痛み」も、しっかりと表現されてゆきます。
このような音楽を聞くと、
戦争の悲惨さ、愚かしさ、
また、何も得ることのない破壊の虚しさに、
胸が締め付けられるようです。
汚辱を悲しい音楽で洗い流して、
純粋に死者を悼むという、
リヒャルト・シュトラウスの肉声が聞こえてきそうです。
買って大正解のCDでした。


なお、販売はブラックになります。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)

なお、SEDAN 9(ブラック)は入荷しております。
全国のQUADRALを扱っていただいている、
オーディオ専門店でご注文可能です。
ぜひ専門店でご注文ください。
ただ、近くにオーディオ専門店がない、
あるいはネットショップなどでアカウントがない、
という方は、以下からご注文可能です。
SEDAN 9通販ページへ

関連記事

QUADRAL RHODIUM200 試聴記 余録その2

QUADRAL RHIDIUM200を外し、 元の友人作ブックシェルフに戻しました。 と

記事を読む

QUADRAL RHODIUM200 試聴記 その2

毎度おなじみ、試聴には必ず使う、 ハンス・クナッパーツブッシュとウィーン・フィルによる

記事を読む

QUADRAL GALAN 9 試聴記 その1

QUADRAL AURUMシリーズの一番小さなスピーカー、 GALAN 9を自宅で試聴する

記事を読む

AURUM RODAN9試聴記2

設置が終わったAURUM RODAN9についてレポートと思いますが、AURUM9シリーズの特徴につい

記事を読む

QUADRAL GALAN 9 試聴記 その10

フランスのCharlin(シャルラン)というレーベルは、 名レコーディングエンジニア、

記事を読む

TOKYO AUDIO BASE2019出展後記 1

先週25日、26日東京 御茶ノ水の「ホテルマイステイズ御茶ノ水」にて開催のTOKYO AUDIOBA

記事を読む

帰ってきたASCENT20LE試聴記 その5

小生は多くの音楽ファンと話をする機会がありますが、 高名な割に「分からない」と言われるのが

記事を読む

QUADRAL GALAN 9 試聴記 その13

GALAN 9は、 室内楽、器楽曲、独唱曲に、 信じられないくらい抜群の威力を発揮します

記事を読む

AURUM RODAN9試聴記4

AURUM RODAN9でヴァイオリンのディスクを聴いてみました。 今回は、3つのフォーマットのデ

記事を読む

第35回オーディオ・フェスタ・イン・ナゴヤ2018

2018年2月16・17・18日 名古屋で開催される第35回オーディオ・フェスタ・イン・ナゴヤ

記事を読む

SONIC IMPACT TGTS01復活試聴記その5

今回はクラシックのオーケストラに戻して、スタンリー・ブラック指揮ロ

オーディセッション大阪2022

2022年11月5と6日、大阪心斎橋ハートンホテルで「オーディオ

SONIC IMPACT TGTS01復活試聴記その4

  小生がTGTS01を使い始めることに、最初は不安がなかった

SONIC IMPACT TGTS01復活試聴記その3

  オーケストラ、ポップスと続きましたので、次はクラシックでピアノ

SONIC IMPACT TGTS01 復活試聴記その2

TGTS01復活試聴記その2は、カーペンターズの"The Sing

→もっと見る

  • 住所
    〒557-0045
    大阪府大阪市西成区玉出西2-16-3
    ネットワークジャパン株式会社


PAGE TOP ↑