QUADRAL ASCENT20LE 試聴記 その10
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試聴記, CLASSIC, QUADRAL, ASCENT20LE
今回でASCENT20LE試聴の最後です。
ASCENT20LEを試聴してきて感じるのは、
これは同価格帯の小型ブックシェルフスピーカーでは、
スタンダードともいえる製品だということです。
同価格帯で、
もっと優れたスペックや解像度を謳うスピーカー、
あるいは高出力のスピーカーもありますが、
ASCENT20LEは高域特性が抜群なのに、
聞き疲れがしない、
低域までのつながりも非常によく、
長時間聞いていても聞き飽きません。
低域がもっと欲しければサブウーファーを追加すればよいのですが、
多くの方には、その必要はないと思います。
すなわち、
スピーカーの存在を意識せず、
音楽を聞けるということです。
小生も途中から「この音で当たり前」と感じてしまい、
スピーカーの試聴にならないほどでした。
試聴というより、
ただひたすら音楽を聞いていたような...。
小生が、もし新しいスピーカーを購入予定で同価格帯から選ぶとすれば、
躊躇なく他のスピーカーを押しのけてASCENT20LEを選びます。
音楽ファンのオーディオへの接し方、
オーディオ・マニアのオーディオへの接し方は、
180度近く異なります。
ASCENT20LEは、
どちらかというと、
オーディオ・マニア向けというより、
こよなく音楽を愛する音楽ファン向けのスピーカーです。
部屋が大きく、
近隣への対策が必要がない場合には、
フロア型スピーカーや大型ブックシェルフがその威力を発揮しますが、
ASCENT20LEは、
そのような環境が望めない音楽ファンにも、
優しく寄り添ってくれます。
それでいて、大音量にも対応していますので、
広い部屋でもその再現能力は素晴らしいものがあります。
小さなボリュームでも大きなボリュームでも、
その能力を発揮します。
ASCENT20LEは万能型スピーカーといってもいいと思います。
このことは、
試聴会やオーディオショップでの試聴室では、
なかなか分かりにくいことです。
試聴会やオーディオショップでは、
通常、自宅で聞くよりも大きな音で、
メリハリの効いた音のするスピーカーがその存在感を主張しますので、
「ごく自然な音」のASCENT20LEは少し不利だと思われます。
要はスピーカーは長く使うということが条件ですので、
試聴会やオーディオショップで聞いてよかったものが、
必ずしも自宅で「良い」とは限りません。
また、「このスピーカー買ったけど、音があまり...」
という方のほとんどは、
置き方が悪いかエージング不足です。
スピーカーをセッティングして、
すぐにいい音で鳴るということはまずありません。
ASCENT20LEはソースのジャンルは問いませんが、
どちらかというと、
アコースティック系のソースに強く、
クラシックやジャズ、ニューエイジ、
アコースティック系のポップスなどに大きな力を発揮します。
でも、ピンク・フロイドやサンタナも聞きましたが、
非常に良かったですよ(^^)。
CDプレーヤーやアンプは、
ACENT20LEでは、
高域特性に優れたものを使用した方が、
その能力を発揮します。
SACDやハイレゾ音源にも、
非常に強いスピーカーだと言えます。
ASCENT20LE試聴の最後は、
クリフォード・カーゾンのピアノ、
ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団で、
ドヴォルザークとフランクのピアノ五重奏曲を聞きました。
DECCAの古い録音です。
これはごく最近たまたま中古で入手、
ASCENT20LEで初めて聞きました。
ASCENT20LEの得意とする音とは、少し違う録音です。
クリフォード・カーゾンのピアノは非常に重い音がして、
音楽を沈み込ませるようです。
最初、「抜けの悪い重い音だなぁ...録音のせいか?」
と思って聞いていたのですが、
カーゾンの重い響きを、
楽曲にもたらしたい響きでもあるようです。
非常に渋くて、重くて暗いピアノの音色です。
フランクを中心に聴きましたが軽快さは皆無、
弦楽四重奏団はウィーンの団体なのに、
北ヨーロッパの重さを感じさせる結果になっています。
ウィリー・ボスコフスキーの第1ヴァイオリンが、
流麗ながらいつもと違う印象です。
第1楽章後半から、
その重さが熱を帯びてきて、
ものすごい迫力を感じてしまいます。
いままで、あれこれ聞いてきた同曲の録音とは、
少し次元の違う音がします。
ASCENT20LEで最初「重い音」と感じていたものが、
聞き進むにつれて全く気にならなくなり、
第2楽章の沈潜とした音楽から第3楽章まで、
一気に聞き通せてしまったのでした。
ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団も見事です。
次回から、
QUADRAL AURUM SEDAN 9 という、
QUADRALのスピーカーでは、
ハイエンドのブックシェルフの試聴を始める予定です。
ASCENT20LE
【スペック】
ASCENT 20LE (アセント20LE)
型式:2ウェイ
基本デザイン:バスレフ型
入力:定格60W/最大90W
周波数特性(Hz):40~46,000Hz
クロスオーバー周波数(Hz):2,700Hz
能率(dB/1W/1m):86dB
インピーダンス(Ω):4~8Ω
ユニット構成:Tweeter φ25mmAluドーム型トゥイーター
Woofer φ135mm Titanium-PP
サイズ:H30.9cm×W17.7cm×D27.0cm
重量(kg)1台:5.15kg
ターミナル:ゴールドコンタクト シングル・ターミナル
価格:ペア 138,000円(税別)
仕上げ:マットブラック
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